ふと、どんな瞬間に人は心がワクワクするのか考えた。
わたしのは大好きなあの人と会う約束をした瞬間だ、とすぐに浮かんだ。
待ち合わせ場所に着いた時でも遠くに見つけて手を振った時でもなく、約束をしたその瞬間。
何を着ていこう?どんなメイクをしていこう?
すぐに心が満たされて、居ても立っても居られなくなる。
そんな瞬間に寄り添えたら幸せだと思った。
このひとつひとつの商品がどんな人のもとへ届くんだろう、と考えながらじっと機械が運んでいくのを見ていた。
ある人は何か新しい挑戦をしてみたいその一歩の後押しに、
ある人は仲良しな友達へのプレゼントに、
ある人は大好きな人とのデートの日の為に。
目の前にあるのはまだどれも同じ商品だけど、肌に触れる時にはいろんな役割になれているんだと想像したら嬉しくてたまらなくなった。
色になる前のまだ未完成の状態。
こねて、集めて、伸ばして。その繰り返しが広い部屋の中でひときわ視線を惹きつけていた。
まるで鉄板の上で踊っているかのように、楽しそうに見えたのかもしれない。
未完成の状態にも美しい瞬間があって、どんなふうに完成へ向かうのか、どこが完成なのかとワクワク出来るのは特別なことだと思った。
朝起きて、今日起こるであろうことを想像しながら鏡を覗く時間の、その過程ももっと楽しめるような気がした。